ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた動きが、次の段階へ進み始めています。

これまで話題の中心にあったのは、発電効率や薄さ、軽さ、柔軟性といった性能でした。けれども、社会へ広く届けるには、性能の高いセルを作るだけでは足りません。

同じ品質で安定して量産できること。そして、役割を終えた製品から材料を回収できること。2026年に公表された二つの取り組みから、実用化に必要な条件を考えます。

量産化で問われるのは「同じ品質を作り続ける力」

2026年8月、アイシンはペロブスカイト太陽電池の量産技術開発が、NEDOのグリーンイノベーション基金事業に採択されたと発表しました。目指すのは、品質を保ちながら大量生産できる工程の確立です。[1][2]

計画には、モジュールの最大500mm角への大型化や、ノズルの複数化による高速塗工が含まれます。生産性と歩留まりを高める一連の工程を開発し、中部国際空港や海外拠点で実証する方針も示されました。[1]

研究室で高性能な一枚を作ることと、その品質を連続して再現することは、似ているようで別の課題です。面積が大きくなれば、わずかな膜厚の違いや塗りむらも、出力や歩留まりに影響します。

製造速度を上げながら、材料の状態や工程条件をそろえる。さらに、完成したモジュールが実際の設置環境でどう振る舞うかを確かめる。量産化とは、こうした地道な再現性を積み重ねる仕事でもあります。

今回の発表は商用量産の完了を意味するものではありません。ただ、開発の焦点が「作れるか」から「安定して作り続けられるか」へ移っていることは、はっきりと読み取れます。

普及の前から、使い終わった後を考える

量産技術が製品を社会へ送り出すための取り組みなら、使用後の材料回収は、その先を支える技術です。金沢大学は2026年6月、フレキシブル型ペロブスカイト太陽電池から鉛、金、インジウムを分離・回収する手法を発表しました。[3][4]

研究では、金を選択的に回収した後、鉛とインジウムを段階的に回収しています。劣化したデバイスにも適用できる可能性が示された点は、実際のリサイクルを考えるうえで見逃せません。[3][4]

ペロブスカイト太陽電池で回収を考える対象は、発電層の鉛だけではありません。電極に使われる金や、ITOフィルムに含まれるインジウムも、再利用を検討したい有用な資源です。

鉛を含むことだけを取り上げて、技術の良し悪しを単純に決めるべきではないでしょう。封止によって使用中の流出を防ぎ、撤去後は適切に管理し、材料を分離して回収する。その仕組みを製品設計と一緒に整えることが大切です。

広く普及してから処分方法を考えるのではなく、普及前から回収方法を考えておく。新しい技術だからこそ、最初から資源循環を組み込める余地があります。

実用化は「作る」から「循環させる」へ

量産は、製品を社会へ送り出すための入口です。回収は、使い終わった製品を資源へ戻す出口になります。どちらか一方だけでは、長く続く市場はつくれません。

これからの競争力は、発電効率だけで決まるものではありません。製造品質、耐久性、施工性、使用中の管理、材料のトレーサビリティ、そして回収のしやすさまでが、製品の価値に関わってきます。

なかでも材料選定は、性能だけの話ではなくなります。量産工程に合うか、安定して調達できるか、使用後に分離しやすいか。開発の早い段階から視野を広げることで、後から生じる負担を減らせる可能性があります。

ペロブスカイト太陽電池の実用化は、発電できる製品を作るだけでは完成しません。安定した製造から長期使用、適切な回収までがつながって、初めて社会に根づく技術になります。

競争の焦点は、「どれだけ高い性能を出せるか」から「どのように作り、使い、循環させるか」へ。量産と材料回収をめぐる最近の動きは、その変化を映し出しています。

本記事は、2026年8月22日時点で公表されている情報をもとに、株式会社H&Sが独自に整理・考察したものです。

参考資料

  1. [1]株式会社アイシン「ペロブスカイト太陽電池の量産化に向けた取り組みがNEDOグリーンイノベーション基金事業に採択」
  2. [2]NEDO「グリーンイノベーション基金事業『次世代型太陽電池の開発/次世代型単接合太陽電池実証事業』で1件を新規採択しました」
  3. [3]金沢大学「フレキシブルペロブスカイト太陽電池から鉛・金・インジウムを分離回収する技術を開発」
  4. [4]ACS Sustainable Chemistry & Engineering『Selective Adsorption-Assisted Recovery of Lead and Metals from Acidic Leachates of Flexible Perovskite Solar Cells』
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