ペロブスカイト太陽電池(PSC)の製品情報を調べていると、「結局、1kWいくらなのか」という数字が意外なほど見つかりません。変換効率や重量、大面積化の実証結果は各社から発表されていますが、量産品の販売価格や施工費まで含めた数字はまだ限定的です。
H&SでもPSC製品を事業として取り扱うにあたり、NEDO、経済産業省、研究機関、メーカー各社の公開資料を継続的に確認しています。資料を追う中では、研究成果と製品情報、現在の数字と将来目標が同じ記事や資料の中に並ぶこともあり、価格だけを抜き出すのは簡単ではありませんでした。
今回は、ペロブスカイト太陽電池の価格に関係する1kW、必要面積、変換効率、重量、発電量について、現時点の公開情報からどこまで分かるのかを整理しました。
「1kWいくら」という数字は、まだ簡単には出せない
現在公開されているPSCの情報には、研究開発品、実証用モジュール、評価用サンプル、個別案件向けの製品、今後の量産を前提にした目標値が混在しています。「価格」と書かれていても、量産販売価格なのか、将来のコスト目標なのか、モジュール単体か、施工まで含むのかは資料ごとに異なります。
今回確認した一次資料の範囲では、シリコン太陽電池のように市場価格として置ける「1kW当たり○万円」という量産品の一般販売価格は確認できませんでした。個別案件の見積額をPSC全体の価格として扱うことも難しく、現段階で一つの市場価格を推計するのは避けています。
政府資料では、2030年に14円/kWhの発電コストを可能にする技術の確立が目標として示されています[3]。これは現在のモジュール販売価格や円/kWの実績値ではありません。本記事では、現在価格と将来目標を分けて整理しています。
面積感は比較的計算しやすい
価格がまだ見えにくい一方で、1kWに必要な発電面積は変換効率から概算できます。太陽電池の標準試験条件で用いられる1,000W/㎡の入射光[1]を単純な前提にすると、変換効率15%で約150W/㎡、20%で約200W/㎡です。発電有効面積では、それぞれ約6.7㎡/kW、約5.0㎡/kWとなります。
標準試験条件における1,000W/㎡の入射光を用いた単純計算。実際の製品外形面積とは異なります。
実製品にはセル間隔、スクライブ、封止、配線、端部などがあるため、この数字とモジュール外形面積は一致しません。当社で製品資料を確認する際も、変換効率だけでなく、外形寸法から面積を出し、公称出力を割り戻したW/㎡を見る方が製品同士の面積感をつかみやすいと感じています。
調べていて特に混同しやすかった「最高変換効率」
PSCのニュースでは、20%台後半の高い変換効率を見る機会が増えました。一方、NEDOのトップデータを見ると、小面積セル、小面積モジュール、ミニモジュール、ガラス基板、フィルム基板が分けて整理されています[2]。「PSCで○%」という一つの数字だけでは、どの大きさ、どの形態の性能なのかまでは分かりません。
2025年3月末時点の同資料では、フィルム基板のセル例として26.61%(面積0.10cm²)、フィルム基板のミニモジュール例として17.38%(面積5,000cm²)が掲載されています。開発機関、面積、測定対象が異なるため、両者を同条件の性能比較として並べた数字ではありません。小さなセルの記録と、製品に近い面積のモジュール値が同じ「変換効率」として流通することを示す代表例として取り上げています。
- 01小面積セル
- 02大面積化
- 03モジュール化
- 04実製品
面積、基板、測定対象が変わるため、各段階の数値は同じ条件での直接比較ではありません。
H&Sで資料を整理する際も、数値の横にセルかモジュールか、基板の種類、測定面積、第三者測定かどうかを併記しています。最高値だけを並べるより、数字がどの段階のものかをそろえた方が、資料間の違いが見えやすくなりました。
PSCの経済性は「軽さ」が絡むと話が変わる
NEDOや資源エネルギー庁、メーカーの公開資料では、フィルム型PSCの用途として、耐荷重制約のある工場・倉庫屋根、建物壁面、曲面などが繰り返し挙げられています[4][6]。価格より先に、軽量性や柔軟性が用途説明の中心になっている資料も少なくありません。
ここで見えてきたのは、PSCの方がシリコン太陽電池より安いという話ではありません。シリコンPVを載せられない屋根や、従来は発電面として使われてこなかった壁面では、そもそも円/kWだけで両者を比較しにくいということです。PSCの重量や形状が新しい設置面を生むなら、その面積から得られる発電量まで含めて経済性の意味が変わります。
一般屋根
シリコンPVを設置できる場合は、既存技術との比較対象になります。
軽量屋根
工場・倉庫など、耐荷重制約のある屋根で実証が進んでいます。
壁面
建物外皮を発電面として使うBIPV用途が検討されています。
曲面
フィルム型の柔軟性を活かす用途として紹介されています。
公開資料で想定例として示されることが多い設置場所を整理したものです。
発電量について公開情報から言えること
kWは設備の公称出力、kWhは一定期間に発電した電力量です。同じ1kWでも、地域、方位、傾斜、日陰、屋根か壁面かによって年間発電量は変わります。
NEDOの日射量データベースでは、地域や方位角、傾斜角ごとの日射量を確認できます[5]。壁面利用が増えるPSCでは、一般的な屋根設置の太陽光発電と同じ前提で年間発電量を置けません。南向き壁面だけでなく、東西面や日陰を含む個別の設置面が候補になるため、公開される発電量の数字にも設置条件の影響が大きく表れます。
公開情報から見えてきたこと
ペロブスカイト太陽電池の1kW価格は、現時点の公開情報だけで一般的な市場価格を置ける段階には至っていません。一方、必要面積は変換効率から概算でき、製品外形ベースのW/㎡まで分かれば、案件ごとの面積感はかなり具体的になります。
変換効率については、研究セルの最高値と大面積モジュールの値を分けて整理することで、数字の意味が見えやすくなりました。また、軽量屋根や壁面のようにシリコンPVでは利用しにくかった場所まで対象にすると、円/kWだけではPSCの経済性を表現しきれません。
H&Sとしても、量産価格、耐久性、施工方法、回収・リサイクルまで含めて情報を追っています。公開情報や実製品の情報が更新され次第、本記事も更新していきます。
H&Sで取り扱っている製品について
H&Sでは、フレキシブル型ペロブスカイト太陽電池や建材一体型太陽光発電(BIPV)用途の製品に加え、PSCに使用されるPET/ITO透明電極などの部材も取り扱っています。
製品仕様や評価用途については、以下の製品ページをご覧ください。
